気になる裁判例
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過労で1億8、000万円賠償命令  レストラン支配人寝たきり

長時間残業の過労で倒れ、寝たきりになったとして、ファミリーレストランの支配人だった鹿児島県鹿屋市の男性と両親が、店を経営する「康正産業」(鹿児島市)に損害賠償などを求めた訴訟の判決で、鹿児島地裁は16日、約1億8,700万円の賠償と未払い残業代約730万円の支払いを命じた。

判決理由で山之内紀行裁判長は、松元さんが自宅で倒れる前の6カ月の時間外労働が月平均約200時間だったと認定。「残業代を支払わずに時間外労働をさせ、過酷な労働環境を見て見ぬふりで放置した。安全配慮義務違反は明らかだ」と会社の責任を指摘した。

判決によると、松元さんは「ふぁみり庵まどか亭札元店」の支配人だった2004年11月10日、就寝中に心室細動を発症、低酸素脳症で寝たきりになった。今も意識不明の状態が続き、両親が自宅で24時間態勢の介護をしている。06年1月に労災認定を受けた。

判決後の記者会見で男性の母は「賠償金を息子自身が使うことはできないが、判決が会社を断罪してくれた。家に帰って息子に『認められたよ』と言いたい」と涙ぐんだ。康正産業は「判決文を読んでいないので、現時点ではコメントできない」としている。


NEC部長の過労自殺認定/地裁、労基署処分取り消す


2000年に自殺したNEC部長の妻が、労災と認めず遺族補償年金を不支給とした三田労働基準監督署の処分取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は11日、「自殺は過労によるうつ病が原因」として処分を取り消した。

青野洋士裁判長は判決理由で「月100時間を超える時間外労働に加え、達成困難なノルマ、中心的な役割の部下の異動などで強い心理的負荷があった」と指摘。うつ病の発症や自殺が、業務によるものと認めた。

判決によると、ソフトウエア開発を担当していた部長は、長時間労働が続いて00年1月ごろにうつ病を発症、同2月に「万策尽きました。会社へ責任をとります」と書き残して自宅近くのビルから飛び降り自殺した。妻は労災遺族補償年金を請求したが、03年に退けられていた。

妻の代理人は「上場企業の部長という裁量性の高い地位の労働者について、恒常的な長時間労働の心理的負荷を正面から認めた判決で意義深い」としている.


「ひげ」社員の訴え認める/一律不可は不合理と地裁

郵便事業会社灘支店(神戸市灘区)に勤務する男性が、ひげや長髪を理由に手当を減らされたとして、慰謝料など計約157万円を求めた訴訟の判決で、神戸地裁は26日、同社に約37万円の支払いを命じた。

判決理由で矢尾和子裁判長は「身だしなみは個人の自由で、郵便窓口の利用者は特別に身なりを整えての応対を期待していない」と指摘。「ひげや長髪を一律不可とするのは合理的制限と認められない」と述べた。

記者会見した男性は「ひげはまゆや目と同じ顔の一部。この顔で何十年も人間関係を築いてきたので、よかった」と話した。

判決によると、男性は1985年ごろからひげを伸ばし、口とあごのひげを出勤前に整えているほか、長髪を後ろで束ねている。

2005年、灘郵便局(当時)に配置転換された際、新しい社内基準に沿いそるよう指示されたが従わず、窓口業務から外された。ひげを理由に、200点満点の人事評価で2年続けて70点以下とされ、手当が月5,400円減らされた。

郵便事業会社近畿支社は「判決理由を検討し適切に対処したい」としている。

別の社員からの人権救済申し立てを受けた大阪弁護士会は08年、ひげで評価を下げるのは人権侵害だと同社に勧告した。


自殺との因果関係認めず/セクハラ訴訟判決

2008年に三重県志摩市の近畿日本鉄道系リゾート施設「賢島宝生苑」の女性社員が自殺したのは、職場でのセクハラ(性的嫌がらせ)で統合失調症になったのが原因として、両親が同社に1億円余りの損害賠償を求めた訴訟の判決で、津地裁(福渡裕貴裁判官)は19日、セクハラの事実を認め、計20万円の支払いを命じた。セクハラと自殺の因果関係は認められないとした。

判決によると、女性は07年6月の新入社員歓迎会で上司に尻を触られた。

原告は女性社員がその後、会社を辞めさせてもらえず精神的に追い詰められて08年1月に自殺したとしていたが、判決は認めなかった。

賢島宝生苑側は口頭弁論で、上司が触ったことは認めたが「性的な意味はなく、女性からの相談もなかった」などと主張していた。


「いじめでうつ」認定/労基署の処分取り消し

富士通に勤めていた京都市の女性が、うつ状態と診断され休職したのは社内のいじめが原因として、労災保険法に基づく療養費を支給しなかった京都下労働基準監督署の処分取り消しを求めた訴訟の判決が23日、大阪地裁であり、中村哲裁判長は因果関係を認め、処分を取り消した。

中村裁判長はいじめを「長期におよぶ陰湿なもので常軌を逸している」と指摘し、「意を決して相談した上司は何の防止策も取らず、女性が失望感を深めたとうかがわれる」と因果関係を認定。労基署の処分を「不適法」とした。

判決によると、女性は同社京都支社でホームページ作成などをしていた2000〜02年、同僚らから顔を殴るまねをされたり、いじめてやると言われたりして精神的に不安定になり、医師が「不安障害、うつ状態」と診断。05年まで休職した後、解雇になった。

同労基署は06年、女性の療養補償請求を「業務が原因ではない」として退けていた。

富士通は「判決内容を把握していないのでコメントできない」としている

社員の自殺は労災/地裁が労基署決定取り消し

2002年5月に自殺した川崎重工業(神戸市)の男性社員の妻が、労災を認めず遺族補償年金を不支給とした神戸東労働基準監督署の決定の取り消しを求めた訴訟の判決で、神戸地裁は3日「自殺は業務に起因する」として決定を取り消した。

矢尾和子裁判長は判決理由で、男性が部署をまとめる立場にあった点に触れた上、業績が上がらないことへの心理的負担があり「ストレスは相当強度なものだったと評価できる」と指摘した。

判決によると、男性は輸送システムグループのグループ長だったが仕事を受注できず、00年12月にうつ病と診断された。その後も取引先との交渉が難航するなどして02年5月に自殺した。妻は遺族補償年金を請求したが、03年9月に不支給とされた。

上司の叱責「心理的負担」 会社員自殺、労災認める

1999年に自殺した出光タンカー(東京)の男性社員の名古屋市在住の遺族が「上司の厳しい叱責などが原因だ」として、国に対し労災と認めなかった処分の取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は18日、請求を認めた。

渡辺弘裁判長は、直属の上司による叱責は (1)ほかの人が見ている場所で公然と行った (2)感情的表現が多く「死ね」などの暴言もあった (3)他部署からも注意を受けるほどだった―などとして「企業での一般的な水準を超えていた」と指摘。

さらに「同僚や別の上司らに改善を訴えても状況が改善されず、男性の心理的負荷は精神的な障害を起こすほど過重だった」として、自殺は業務が原因と結論付けた。

判決によると、男性は97年7月に出光興産から出光タンカーに出向し経理などを担当。99年7月ごろ、うつ病の状態に陥り同26日に自殺した。遺族は2001年に労災申請したが、新宿労働基準監督署が03年に不支給とし、再審査も退けられた。


内々定取消し二審も学生側勝訴/会社側に55万円支払い命令

不動産会社コーセーアールイー(福岡市中央区)が採用の内々定を一方的に取り消したのは違法として、大学生だった20代の女性が同社に約380万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は10日、一審福岡地裁判決に続いて会社側の責任を認め、賠償金を支払うよう命じた。賠償額は一審の110万円から55万円に変更した。

判決理由で西謙二裁判長は、会社側が内々定後の女性に「経営が悪化しても大丈夫」と採用が確実と取れるような発言をしたことなどを指摘。「会社側の対応は、法的保護に値するほど高まった労働契約締結への女性の期待に配慮しておらず、誠実なものとはいえない」と述べた。

判決によると、女性は大学4年だった2008年5月に内々定を通知され、入社承諾書を提出し就職活動を終えたが、内定式直前の同9月、世界的金融危機など経営環境の悪化を理由に内々定を取り消された。同社からはその後、具体的な説明はなかった。

コーセーアールイーの内々定の取り消しをめぐっては、30代男性が起こした別の訴訟で、同社に22万円を支払うよう命じた福岡高裁判決が確定している。


飲酒運転の懲戒免職は適法、高知県が逆転勝訴

飲酒運転による物損事故で懲戒免職となった元高知県職員の男性が、県に処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、高松高裁は10日、処分を取り消した一審高知地裁判決を取り消し、男性の請求を棄却した。

一審判決は「飲酒運転に対する規範意識の高まりを考慮しても、処分は厳しすぎ、社会通念上妥当性を欠く」としたが、小野洋一裁判長は「物損にとどまらず、人身事故につながった危険性が高く、公務員に対する信頼を失わせた」と指摘。「処分は裁量権の範囲を逸脱、乱用したとは認められない」と判断した。

判決によると、高知土木事務所の主任技師だった男性は2009年4月、高知県土佐市の居酒屋などで飲酒後、乗用車で帰宅中に信号機に衝突する事故を起こし、呼気1リットルあたり0.7ミリグラムのアルコールが検出されたため道交法違反(酒酔い運転)で逮捕され、同年5月に懲戒免職となった。

高知県は1997年、全国に先駆けて「飲酒運転の職員は原則として免職」という基準を導入。県は「適正な判断がなされた。今後も服務規律の徹底に努めたい」とコメントした。

過労自殺、遺族の勝訴確定/ニコンなどの上告退ける

光学機器大手ニコンの埼玉県の工場に派遣されていた男性が自殺したのは劣悪な勤務環境でのうつ病が原因として、遺族が同社と名古屋市の業務請負会社に計約1億4,000万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は1日までに、両社の上告を退ける決定をした。計約7,000万円の支払いを命じた二審東京高裁判決が確定した。9月30日付。

男性は1999年3月に23歳で自殺した。原告は岩手県一関市に住む母親。

二審判決は一審東京地裁判決同様、自殺原因を過労によるうつ病とし、派遣元と派遣先双方の注意義務違反を認定。「製造業への派遣を禁じた当時の労働者派遣法に反していた」とも指摘した。

請負会社は「うつ病の発症から自殺までの期間が短く、結果回避の可能性が低かった」と主張。一審判決は減額理由としたが、二審判決は「過失の重大性と直接関係がない」と否定した。

二審判決によると、男性は窓や休憩スペースのない部屋で製品検査業務を担当。不規則な長時間勤務が続き、退職を申し入れたが認められず無断欠勤となり、寮で自殺した。

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